私はその女性に出会い、
「またここにきっと来よう!いや来るのだ!」
と固く決意したのでした。
皆さまお疲れ様です。
スクエアライン、金曜日ブログ担当の梅田敬子でございます。
その日私は、たまたま夜に用事があり、20時過ぎのさいたま市内で自転車を飛ばしておりました。
寒風吹きすさぶ中、自転車を飛ばし帰り道を急いでいたのですが、ふと、わが家の冷蔵庫内にも寒風が吹きすさんでいたことを思い出し(ハタジョの家の冷蔵庫はとてもありがち)、
「そうだ。スーパー行こう。」
と突然のスーパー行きを決めたのです。
そのまま古ぼけた自転車をこぎ続け、1件のスーパーに到着しました。24時間開いているありがたいスーパーです。
駐輪場に自転車を行儀よくとめ、きちんとカギをかけ、しずしずと店内に入ります。買い物かごを1つ借り、いざ食材ショッピングの開始です。
そのスーパーは何年か前まで、よく利用していたお店でした。その時に勤めていた会社から帰宅する道すがらにありましたので、もうほぼ毎日のように通っていました
久しぶりに寄ったそのスーパーは、同じ店だけれど、どこか他人行儀な雰囲気です。
店内のディスプレイも若干変更されたようです。
以前はお馴染みだったはずなのに、今は違う。野菜も豆腐も肉も魚もパンも、みんな私を物珍しく眺めているかのような気分になってきます。
わずかな緊張感とともにショッピングを終え、お会計のためレジに向かいました。
無事に会計を終えたあと、会計を担当してくれた若い女性が私にこう言いました。
「あの…かなり…久しぶりですよね……。3年ぶりくらい…ですか?」
はっと顔を上げると、私がそのスーパーに通っていた頃から働いていた20代半ばくらいの女性です。大きな目をくりくりさせて、驚いたように私を見ています。
実は私の方でも、その女性に気付いていたのです。私も
「あ!まだあの人働いているんだ!」
と思っていたし、私がレジに現れた瞬間彼女の大きな目がキラッと光ったのも見ていたのです。だけどまさか話しかけられるとは思っていなかった。だって3年もそのスーパーに行っていないし、会話らしい会話をしたこともないし、私のことなど覚えているなんて思いませんでした。
彼女は続けて言いました。
「ずっといらっしゃらなかったので、もう遠くに引っ越しでもしたのかと思っていました……。」
な!なんと!そんな風に考えていてくれたのか!私は
「私を……、覚えていらっしゃるんですか……?……あの、引っ越した訳ではなく、職場が変わったせいでここにはあまり寄らなくなってしまって……。」
なぜかしどろもどろになる私。
「もちろん覚えてますよー。おうちはここから近いんですか?」
「はい、まあまあ近いです。」
「そうなんですねー。じゃあ、また会えますね。」
「はい‼また来ます!」
店を出た私は、幸福な気持ちに包まれていました。何百人もいるであろうスーパーの客の1人で、しかも何年も行っていない私を覚えていてくれていた!
スーパーに訪れた時と同じように寒風吹きすさぶ中を、再び自転車でこぎ出します。しかし気持ちはホットです。
小さな言葉の交わし合いで、人の心をこんなにあたためてくれるのです。
一番嬉しかったのは
「また会えますね。」
と言われたこと。この女性は人の心をあたためる一言を知っている。
あの女性……天使過ぎる……。
「~過ぎる」、という言葉は「美しい」「早い」等の形容詞の後に付けてその意味を強調するのが正確なのだ、と知ってはいても言葉の正しい用法など超越して表現したい喜びがあるものです。
素晴らしいお仕事をされている方だなあと、心の底から拍手を送りたい気持ちです。
自転車を元気にこぎながら、私は夜の空を見上げました。
よく晴れた冬の夜空にはきらきらと光る星と、丸く膨らみかけた月が空高くに輝いていました。